音楽図書館協議会:Music Library Association of Japan


Music Catalog Clinic

Music OCLC Users Group Newsletter No. 92 June 2006から

1. 声域: 版表示か、演奏手段か、はたまたタイトル関連情報か

Q LCRI(以前はMCD)5.2B2を読み直して、一つ質問しなくてはいけなくなりました。(例の版表示として記載する声域についてです。)歌曲やアリアの合集で、タイトルと文法的に結びついていない声域を示す表示がある場合、必ずこの細則を発動させてきました。が、細則の「演奏手段とは区別される」という括弧で括られたフレーズが、新たなパワーを持って私を見つめているような気がしてなりません。
American Aria Anthology(G. Schirmer American Aria Anthologyと採るべきかもしれません)というタイトルの4巻セットのコピーカタロギングをしています。各巻は、それぞれソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトン/バスの声域用になっていて、そのことが右上の隅の小さな枠内に表示されています。各巻に含まれている曲は異なります。ソプラノ用のアリアが一まとまり、メゾ・ソプラノ用のアリアが別に一まとまり、という具合です。OCLCにある目録はとても良くできています。各巻とも、声域はタイトル関連情報として転記してあります。版表示には採っていません。先ほどのLCRIが発動されるのは、含まれている曲が同じ場合、あるいは一部が同じ場合に限るのでしょうか。頭に浮かんでいるのは、シューベルトのリート集です。高声、中声、低声があり、極低声というのも一度見たことがあります。高声用の合集には、原調の曲が一まとまりと、元々は低い調のものを移調して高声用にしたものが入っています。中声用は、やはり原調の曲と元々は高い調の曲を移調して下げたものが入っていて、つまり重なっている曲が多いのですが、完全に一致しているわけではありません。要するに、声域を演奏手段とみなすか、版表示とみなすかについて、いつどの要素を考えるべきか頭が混乱しています。

A ご説明の4巻セットについて言えば、目録規則1.1B9の精神に則り、それぞれ声域の表示を巻、または部分と考えるのが最良だと確信します。もしも各巻ごとに目録されるのであれば、の話ですが。出版楽譜における「版」の概念がいかに曖昧かは、LCRI5.2B1を見てわかるとおりで、考え方は示されているものの、徹底的問題整理にはほど遠いものがあります。現行のAACR2の「版」定義をつらつらと眺めると、――この文脈ではあまり有益とは思えませんが――「同一性」という考え方が鍵だとわかります。ここから展開すると、各巻がそれぞれの声域に割り当てられ、なおかつ 内容がほとんど重なっていないという事態を以って、同じ資源から派生する「版」と考えるのは無理があるでしょう。内容が完璧に重なっている場合は、異なる声域のバージョンが「版」だと言われて、納得しやすいでしょう。部分的に重なっている場合は...それぞれの判断になるでしょう。LCRIの説明文を読んでも例を見ても、声域表示と演奏手段表示をどのように区別するのか、あまりはっきりしません。ただ声域表示の場合、声域だけで伴奏については何も書かれていないという事は確かです。AACR2の「演奏手段」の定義は、25章統一タイトルの25.30B1 の脚注11にあります。「音楽作品に本来意図されている楽器または声楽、もしくはその双方の演奏手段の簡潔な表示」。統一タイトルの文脈では、この定義をかなり厳密に読む必要ありと強く言っておきたいと思います。ここでは本来の演奏手段を、一般的にではなく、詳しく書くようになっています。当然ですが、統一タイトル以外における演奏手段表示は、本来の手段に限定、というわけにはいかないでしょう。





 

ジェイ・ワイツの目録Q&Aに戻る
報告・論文・情報に戻る