音楽図書館協議会:Music Library Association of Japan


著作権トピックス(2004.9.3)
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著作権専門委員会-


 
     

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図書館に関わる著作権法改正の動向―音楽図書館と関係の深い事項を中心に

 著作権法の一部改正が、6月3日の衆議院本会議で可決、成立し、平成17(2005)年1月1日から施行されることとなりました。その内容について、これまでも、新聞記事からのトピックスとしてお伝えしてきましたが、今回は、雑誌『コピライト』や三田図書館・情報学会で得られた情報をもとに、整理してお伝えいたします。
 また、平成17年の改正には至らないながら、これまで取り上げられてきた改正要望事項の内、音楽主題図書館との関連の深い事項について、今後の動向も踏まえて、わかる範囲でご報告させていただきます。
  最後に、著作権関係の問題で迷った時に役に立つサイトをご紹介します。

平成17(2005)年1月1日より施行される「著作権法の一部改正」の概要

1) 改正の趣旨
*「著作物の保護強化を図り、『知的財産戦略』を推進するための法整備を行う。」とのことです。

2) 改正の概要
音楽レコードの還流防止措置
*「アジア諸国における日本音楽のニーズの高まりを踏まえ、我が国の音楽文化の海外普及を積極的に促進するため、日本における販売を禁止した音楽レコードが海外から還流しないよう措置を講ずる。」との趣旨で、具体的には、法百十三条(侵害とみなす行為)に5が新設されます。大変長く、硬い文ですが、略しながらご紹介すると、「(前略)…専ら国外において頒布することを目的とするもの(以下この項において「国外頒布目的商業用レコード」という)を…(中略)…国内において頒布する目的をもって輸入する行為又は…(中略)…、それらの著作権又は著作隣接権を侵害する行為をみなす。…(後略)」
* 前回もお伝えしましたが、政府が国会に案を提出した後、洋楽の輸入盤も対象になるこ
とがわかり、CD輸入全般をも規制するのではないかと音楽ファンの間で危機感が強まり、反対署名運動等が巻き起こりました。日本レコード協会は、「音楽愛好者に何ら不利益、不自由を与えず洋楽レコードを提供していく」とのメッセージを出し、2004年6月の国会での可決に至りました。

書籍・雑誌の貸与権(無断で貸与されない権利)の付与
* 趣旨は、「レンタルブック店が出現し、事業を大規模に展開しつつある状況を踏まえ、我が国の出版文化が衰退することなく発展できるよう、『書籍・雑誌』にも『貸与権』を付与する。」とのことです。
* 具体的には、附則(書籍等の貸与についての経過措置)第四条のニ「新法第二十六条の三の規定は、書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には、当分の間、適用しない。」が削除されます。
* 図書館関係者は、附則4条の2が撤廃されても、38条4項で、営利を目的とせず、かつ、貸与に係わる対価を徴収していない場合には、著作権者の許諾なしに自由に著作物を貸与することができるとされているため、「既得権」の主張をしませんでした。しかし、国会において、「私立大学図書館」(授業料が「対価」に該当するおそれ)、「企業資料室」(貸出が「営利目的」に該当するおそれ)、「民間の会員制図書館」(会費等が「対価」に該当するおそれ)などの貸出が、附則4条の2撤廃後も引き続き自由に行えるかどうかとの懸念が表明されました。
*政府より、事実上これらの貸出に影響を与えないとする答弁書が提出され、この懸念は解消されました。

罰則の強化
* 「著作権侵害に対する抑止効果を高めるため、罰則を強化する。」との方針のもと、次のような引き上げがなされます。
 1) 「懲役刑」と「罰金刑」の上限を特許権・商標侵害と同程度に引き上げる
   ・ 懲役刑:3年以下 ⇒5年以下
   ・ 罰金刑:300万円以下 ⇒ 500万円以下
 2) 「懲役刑」が科された場合に、「罰金刑」も併科できるようにする
* 具体的には、法第百十九条から第百二十二条まで及び第百二十四条の条文の一部が変更されます。

図書館に関わる著作権法改正の動向 ― 最近検討された事項

* 図書館関係の著作権法改正の検討は、まず、各図書館種代表で構成される「図書館懇談会」で、図書館側の意思決定を行ない、権利者側と利用者側で構成される「当事者間協議」で話し合い、合意を得たもののみ「法制問題小員会」で取り上げられます。その後、「文化審議会著作権分科会」が事実上の決定機関となり、文化審議会より国会に提出されるという仕組みになっています。
* 今回の改正には至りませんでしたが、最近「当事者間協議」で話し合われた事項の内、関連深いと思われる事項の動向をご報告します。

ILLにおける図書館間でのFAX送信 [図書館側]
* 図書館側が要望し、「当事者間協議」での合意には達したのですが、「法制問題小委員会」において「法改正が適当」とされなかったため、改正事項とはなりませんでした。次善の策として、国公私立大学図書館協力委員会が学術出版系2団体―JCLS(日本著作出版権管理システム)とJAACC(学術著作権協会)―と無償許諾契約を締結し、同委員会加盟の大学図書館に限り、2団体管理著作物の公衆送信が自由に行えることになりました。この2団体併せると日本で複写利用する海外学術著作物の9割を占めると言われています。

図書館での非営利・無料の上映を権利制限から除外すること [権利者側]
* 1990年代からの「無料上映会」問題に端を発するもので、図書館所蔵ビデオによる上映会の開催が「営業妨害」であるとして劇場主・著作権者が問題視し、2002年度末には日図協と日本映像ソフト協会とが「合意書」を取り交わす等の進展もありましたが、これとは別に、文化庁に要望が出されていました。
* 「当事者間協議」では、「上映禁止」の表示があるビデオのみを上映禁止とすることで合意されていましたが、「法制問題小委員会」において、38条1項の営利を目的としない上演等の及ぶ範囲を限定すべきとの答申が出されました。
* 学校等の教育機関、福祉施設等に限定すべきとの意見も出されましたが、どこまで限定するのかを詰めきれずに、平成15年改正に盛り込まれませんでした。
* 現在では、具体的な経済的損失が不明確であるとの理由により、法制審査に入れない状態になっているとのことです。
* ここで、注意すべき点は、著作権法上の「上映」は、映画館・ホール等で映画を見せることだけではなく、視聴覚ブース等で見せることも含まれるということです。そのため、この改正が実現されれば、図書館でAV資料を見せることすら自由にできなくなる可能性があります。

図書館の貸出に補償金を課すこと [権利者側]
* 文芸著作者側から、図書館の貸出に対する補償金制度=公貸権制度導入の要望が出され、2001年9月より当事者間での検討に入りました。2003年1月に公表された著作権分科会審議経過報告では、法38条5項に規定されている映画の著作物の貸与補償金制度に、将来的に「書籍等」を加えるという方向性に反対はなかったが、当事者間で具体的な補償金制度について検討するということなので、その検討を見守るという整理がなされています。
* なお、映画の著作物(ビデオ、DVD等)の無許諾の貸出は、補償金を支払っても、公共図書館、公的視聴覚ライブラリーに限られています。ただし、日図協の著作権処理済ビデオは、38条5項による補償金ではなく、「著作権処理」がなされていますので、公共図書館でなくても、大学図書館でも貸出に供することができます。

「再生手段」の入手困難な図書館資料の保存のための複製を自由化すること [図書館側]
* SPレコード、LPレコード等再生手段の入手が困難な資料を他の媒体に複製して保存する場合の自由化について、以下のようなガイドラインを前提にして、当事者間での合意が成立し、「著作権分科会」でも「法改正が適当」とされました。しかし、実際の法改正作業の段階で、「法改正が必要な事態が存在しない」等の理由により、案文に盛り込めずに、法改正はなされていません。
* ガイドライン:a.複製部数は1部に限定すること。b.複製したものの譲渡は認めないこと。c.旧形式の複製物の廃棄は求めないこと。d.「再生手段」の入手が困難とは、新品市場で入手し得ないことを意味すること。e.当該著作物について新形式の複製物が存在しないこと。

平成16(2004)年1月から施行された「著作権法の一部改正」の概要

* 参考までに、平成16(2004)年1月から改正された主な内容をお知らせします。

「映画の著作物」の保護の強化⇒法54条、57条
アニメ、ビデオ、映画、ゲームソフトなど、我が国が強い競争力を持つ「映画の著作物」について、内外に於ける保護を強化するため、保護期間を
「公表後50年」から「公表後70年」に延長する。

教育機関等での著作物活用の促進⇒法33条-2、35条-1、2、36条
教育の情報化等に対応して各種著作物の活用を促進するため、以下について「例外的な無許諾利用」ができる範囲を拡大する。
・ コンピュータ教室等での「児童生徒」等による複製
・ 「遠隔授業」における教材等の送信
・ 「インターネット試験」等での試験問題の送信
・ ボランティア等による「拡大教科書」の作成
* 「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法35条ガイドライン」というガイドラインが『コピライト』No.518(2004.6)に載せられていますので、参照してください。

著作権侵害に対する司法救済の充実⇒法114条
1) 権利者による「侵害行為の立証負担」を軽減するため、被告が侵害行為を否認する場合には、単純に否定するだけでは足りず、被告自身が自己の行為の具体的態様を説明しなければならないこととする。
2)権利者による「損害額の立証負担」を軽減するため、「海賊版の販売数」×「正規品の単価当たり利益」を損害額として算定できるような、新たな「損害額算定制度」を導入する。

著作権関係Q&Aサイト紹介

社団法人 著作権情報センター http://www.cric.or.jp/
* この中に「著作権Q&Aシリーズ」があります。

「大学図書館における著作権問題Q&A」(第3版)
国公私立大学図書館協力委員会・大学図書館著作権検討委員会編 PDFファイル
 
http://wwwsoc.nii.ac.jp/anul/j/documents/coop/copyrightQA_v3.pdf 
*大学図書館において、著作権関係で日々悩む問題について、108点の設問別に解説がなされています。一つの設問につき、複数の考え方が示され、今後の合意に向けた材料にもなるよう工夫されています。大学図書館以外の方も是非ご覧ください。

特に音楽関係は、JASRAC(社団法人 日本音楽著作権協会)http://www.jasrac.or.jp/
* この中の「FAQ」を開くと、音楽に関する著作権問題のQ&Aが見られます。

以上、次の資料を参考にさせていただきました。
・『コピライト』No.519,Vol.44(2004.7), No.507,Vol.43(2003.7)ほか。
・南亮一「図書館に関わる著作権法改正の動向:貸出し・複写を中心として」
(三田図書館・情報学会 第119回月例研究会 資料 2004年7月24日)

市川啓子(国立音楽大学附属図書館)